セキュアな顔認証を実現!Azure Face APIのトレーニング&識別機能を徹底解説

Uncategorized

「顔パスで認証できるシステムを、もっと簡単に・安全に実現できたら…」
そんなニーズに応えるのが、Microsoft Azure が提供する Face API です。

クラウド上で動作するこの顔認識サービスは、人物の識別や本人確認を高精度かつスケーラブルに実現するための機能を豊富に備えています。
中でも注目すべきなのが、「識別(Identification)」と「トレーニング機能」です。これらを活用することで、特定の人物を登録し、新たに検出した顔と照合するセキュアな認証基盤を構築できます。

本記事では、Azure Face API を使って顔認識モデルをトレーニングし、現実の業務やアプリケーションで使えるセキュアな顔識別システムを構築する手順と仕組みを、開発者目線でわかりやすく解説します。

Azure Face APIとは?

Azure Face API は、Microsoft Azure の Cognitive Services に含まれる RESTful API の一つで、画像内の「顔」に関するさまざまな情報を、クラウド上の機械学習モデルを通じて解析・取得できるサービスです。

このAPIは、画像を入力として送信すると、Azure側のAIモデルが以下のような処理を行います:

  • 顔の位置を検出(bounding box)
  • 複数人が写っている場合も個別に識別
  • 顔の特徴点(ランドマーク)抽出
  • 属性情報(年齢、性別、表情など)の推定
  • 複数の顔画像間の一致判定(Verification)
  • 登録済み人物との照合(Identification)

SDKではなく完全にHTTPベースで利用できるため、PythonやNode.js、C#、さらにはcurlやPostmanなど、あらゆる環境から呼び出せる柔軟性があります。

また、Face APIのモデルは Azure 側で継続的に学習・改善されており、開発者側で機械学習のチューニングをする必要はありません。

Azure Face APIでできること

Azure Face API は、単に「顔を検出する」だけではありません。画像やビデオ内の顔情報を高度に解析し、個人認識や本人確認といったユースケースまでカバーできる多機能なサービスです。

以下では、代表的な機能を一つずつ解説します。

① 顔検出(Face Detection)

画像内に何人の顔があるのかを検出し、**顔ごとに一意のIDと位置情報(境界ボックス)**が返されます。この顔IDは、24時間キャッシュされ、後続のAPI呼び出しで同じ人物かどうかの比較に使用できます。

  • 境界ボックス:顔の位置(x, y, 幅, 高さ)
  • 顔ID:顔ごとに自動で割り振られるUUID

② 顔属性分析(Face Attributes)

検出された顔ごとに、詳細な顔の特徴を返します。属性の例は以下の通り:

属性カテゴリ詳細
頭の姿勢ピッチ(上下傾き)、ロール(左右傾き)、ヨー(首振り)
眼鏡の種類老眼鏡、サングラス、水泳用ゴーグルなど
ぼかしレベル低・中・高
露出過少・適正・過剰露出
ノイズ画像内の視覚的ノイズの程度
隠ぺい状態顔の一部が髪、マスク、帽子などで覆われているか
アクセサリー眼鏡、帽子、マスクなどの装着
認識品質QualityForRecognition:低・中・高(照合に適した顔か)

これにより、マーケティング分析やUX改善、顔画像の品質管理などにも活用できます。


③ 顔のランドマーク検出(Face Landmarks)

顔の中でも特に重要なポイント、例えば目頭・目尻、瞳孔、鼻の先端、口角、あごの位置などの座標を取得できます。
これにより、ARエフェクト、フェイスフィルター、アバター生成などの応用が可能になります。


④ 顔の比較と検証(Face Verification)

2つの顔画像が同じ人物かどうかを判定する機能です。
返されるスコア(信頼度)に基づいて、ログイン認証や不正アクセス検出などに使えます。

  • 同一人物なら高いスコア(例:0.98)
  • 異なる人物なら低いスコア(例:0.12)

⑤ 顔認識(Face Identification)

複数の登録済み人物(Person)を含む**顔データベース(PersonGroup)**を使って、新しい画像内の人物が誰であるかを自動で識別します。

  1. 事前に人物を登録(PersonGroupを作成)
  2. 顔IDを使って識別APIを呼び出す
  3. 最も一致する人物を返す(confidence付き)

セキュリティシステムやスマート受付などに非常に有用です。


⑥ フェイシャル ライブネス検出(Facial Liveness)

この機能では、入力されたビデオストリームがリアルな人物によるものか、それとも偽装(静止画や動画の再生)かを判別できます。

スプーフィング(なりすまし)対策として有効で、顔認証のセキュリティを一段階高めるために導入が進んでいます。


顔IDの一時キャッシュによる比較・検証

Azure Face API では、検出された顔に付与された一意のIDが最大24時間保持される仕組みになっています。この仕組みにより、例えば:

  • 数時間前に撮影した顔と、
  • 今検出された顔を

比較して「同じ人物か?」を検証することが可能です。

この機能は、人物の名前を知らなくても、同一人物かどうかだけを判定できるので、監視カメラや入退室管理など、匿名性を保ったままのセキュリティ運用にも向いています。

トレーニング済み FaceAI モデルとは?

トレーニング済み FaceAI モデルとは、Microsoft が事前に大量の顔画像データを用いて学習させた、顔認識専用のAIモデルのことです。

これにより、開発者は自分で機械学習やデータ収集を行うことなく、すぐに以下のような顔解析ができます:

  • 顔の検出
  • 年齢や性別の推定
  • 顔画像同士の比較や識別
  • 顔の特徴点抽出 など

Azure Face API はこのモデルをバックエンドで使用しており、APIを呼び出すだけで高度な顔認識が実現できます。

Face AIサービスで顔認識モデルをトレーニングする方法

Azure Face API を使って顔を「識別(Identify)」するには、あらかじめAIに人物を覚えさせるトレーニング工程が必要です。これは、従業員や会員など特定の個人を識別する場面で非常に重要です。

以下では、顔認識モデルをトレーニングする基本的なステップをわかりやすく解説します。

✅ 手順1:人物グループを作成する

まずは、識別したい人物の集合(例:「社員」「登録ユーザー」など)を管理するために、**人のグループ(PersonGroup)**を作成します。

PUT /face/v1.0/persongroups/{personGroupId}

このグループに個々の人物を追加し、グループ単位でトレーニング・識別を行います。


✅ 手順2:グループに人物(Person)を追加する

次に、グループ内に**個別の人物(Person)**を登録します。たとえば「山田太郎」「佐藤花子」など、識別したい個人を1人ずつ追加していきます。

POST /face/v1.0/persongroups/{personGroupId}/persons

追加後には、各人物に一意の personId が割り振られます。


✅ 手順3:各人物に複数の顔画像を登録する

各人物に対して、できるだけ異なる角度や表情の画像を複数枚追加します。これにより、モデルはその人物の顔の多様な特徴を学習しやすくなります。

POST /face/v1.0/persongroups/{personGroupId}/persons/{personId}/persistedFaces

ここで登録された顔は「永続化された顔(Persisted Face)」として管理され、24時間経っても有効なまま保持されます。


✅ 手順4:グループをトレーニングする

すべての人物と顔画像の登録が完了したら、グループ全体をトレーニングします。これは、Azure のAIに「この顔は誰か」を学習させる処理です。

POST /face/v1.0/persongroups/{personGroupId}/train

トレーニング完了後、このグループに対して新しい顔画像を識別(identify)することが可能になります。

Azure Face APIの利用料金

Azure Face API には、Free(無料)プランStandard(従量課金)プランの2つの主要な利用形態があります。それぞれの特徴と、どちらを選ぶべきかのポイントを見ていきましょう。

プラン月額料金利用上限適した用途
Free¥0月30,000件まで検証・開発用途
Standard従量課金無制限(TPS制限あり)商用・本番環境

まずはFreeプランで試してみて、機能や精度に満足できれば、商用化や拡張のタイミングでStandardプランに移行するのが王道です。

Freeプラン(無料)

✔ 特徴

  • 月あたり 30,000トランザクションまで無料
  • 1分間あたり最大 20件のAPI呼び出し(TPS)
  • 顔検出、検証、認識、類似顔検索など基本機能はすべて利用可能
  • 商用利用は不可(開発・評価目的に限定)

✔ 向いている人・用途

  • Azure Face API をこれから学ぶ人
  • 検証・プロトタイプ開発をしたいエンジニアや研究者
  • 少量の顔画像を扱う個人または小規模チーム

Standardプラン(従量課金)

✔ 特徴

  • 使用量に応じて課金
  • 最大 10TPS(トランザクション/秒) の高速処理が可能
  • Freeプランと同じく全機能が使える+セッション管理などの拡張機能も利用可能
  • トランザクション数が多いほど1回あたりの単価が安くなる段階課金制

✔ 向いている人・用途

  • 商用アプリケーションやサービスで本番運用する開発者
  • 一定以上のスループットやリアルタイム性が求められるシステム
  • 大量のユーザーを相手にする企業や組織の顔認証システム

オプション機能の料金

Azure Face API には、基本機能に加えて以下のオプション機能があります。用途に応じて追加料金で利用できます。

機能料金
フェイスストレージ(顔画像の保存)¥1.429 / 月(1,000個あたり)
トレーニング担当者グループ¥142.856 / 1,000グループ/月
Face Liveness(ライブネス検知)¥2,142.826 / 1,000件
Face Liveness + 検証¥2,214.253 / 1,000件

Azure Face APIのデプロイ手順を解説

Azureポータルを使用してFace APIをデプロイする手順を、実際の画面キャプチャに基づいてわかりやすく解説します。

ステップ1:Face APIリソースの作成画面へアクセス

Azureポータルで「Face API」を選択し、リソースがまだ存在しない場合は「+ Face API の作成」ボタンをクリックします。

Screenshot

ステップ2:基本情報の入力

以下の情報を入力します。

Screenshot
  • サブスクリプション:使用するAzureサブスクリプションを選択
  • リソースグループ:既存のグループを選ぶか「新規作成」
  • リージョン:例「Japan East」
  • 名前:例「AiT-FaceAI」
  • 価格レベル:無料枠(F0)またはニーズに合わせたプランを選択

ステップ3:ネットワーク構成

アクセス許可に関する設定を行います。

  • デフォルトでは「すべてのネットワーク(インターネット含む)」が選択されています。
  • セキュリティ要件に応じて「Selected networks」や「無効(Private Endpoint)」に変更可能。

ステップ4:Identity(ID)設定

  • 「システム割り当てマネージドID」をオンまたはオフに設定
  • 必要に応じて「ユーザー割り当てID」を追加可能

この設定は、他のAzureリソースと連携する場合に有用です。

ステップ5:確認して作成

すべての設定を確認し、「確認と作成」ボタンを押してデプロイを完了します。数分でリソースが作成されます。

ステップ6:Face APIの利用準備完了

デプロイ完了後、以下の情報が表示されます:

  1. APIキーとエンドポイント:アプリケーションと連携するために必要
  2. クイックスタートリンク:C#、JavaScript、Pythonなどのサンプルコード
  3. ドキュメントリンク:さらなる詳細やユースケースの参考資料

Face APIでエンドポイントとキーを確認する方法

Face APIを使用する際は、エンドポイントとキーが必須です。その確認方法を解説します。

要素使う場所用途
エンドポイントAPIリクエストのURL先APIの呼び出し先
キーHTTPリクエストのヘッダー(Ocp-Apim-Subscription-Key認証

Azure Portal にログイン
https://portal.azure.com にアクセスして、サインインします。

Face API リソースを選択
「AiT-FaceAI」のような Face API リソース名をクリックします。

概要にエンドポイントとキーの管理が記述されています。

キーを管理するにはここをクリックを選択したあと、「キー 1」または「キー 2」を表示し、どちらかをコピーします。実際に使用する際はどちらも利用可能です。

Screenshot

顔を識別(Identification)や検証(Verification)するための手順は、Microsoftの公式ドキュメントに詳細なガイドがあります。こちらを参考に、試してみてください。

Azure Face APIで、セキュアな顔認証を手軽に実現しよう

Azure Face API は、クラウド上で高精度な顔認識を簡単に実装できる強力なツールです。
今回ご紹介したように、人物グループの作成から顔画像の登録、モデルのトレーニング、そして識別の実行まで、一連のプロセスを API だけで完結させることができます。

また、フェイスライブネス検知や本人確認といった高度なセキュリティ機能にも対応しており、実用的かつ信頼性の高い顔認証システムを構築するうえで非常に有用です。

まずは無料プランで試しながら、必要に応じてStandardプランやオプション機能を活用して、あなたのプロジェクトに最適な顔認識体験を実現してみてください。

プロフィール
tanat

「株式会社あいてぃ」に所属。
主にAWSとAzureなどのクラウドインフラを管理するクラウドエンジニアとして活動中。
スマホアプリやフロント部分の構築も可能なフルスタックエンジニアとして活躍できるように日々勉強中です。

tanatをフォローする
Uncategorized
tanatをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました
function cocoon_custom_code_copy_script() { ?>   } add_action('wp_footer', 'cocoon_custom_code_copy_script');