「プログラミングを始めたけれど、GitやGitHubって一体何?」
「チーム開発でよく聞くけど、いまいち使い方がわからない…」
と、感じていませんか?
現代のソフトウェア開発において、これら2つのツールはもはや避けて通れない存在です。
結論から言えば、Gitはファイルの変更履歴を記録・管理するためのシステムであり、GitHubはそのGitで管理しているコードを複数人で共有したり、編集したりするためのオンラインツールです。
この記事では、GitやGitHubの違いや開発する際の実際のコードの活用術まで、両ツールの全体像をわかりやすく解説します。
Gitとは?
Gitは、ファイルの変更履歴を記録・管理するためのシステムです。
プログラミングの現場では、日々大量のコードが書かれ、修正されていきます。Gitは、これらのファイルの「いつ、誰が、どのような変更を加えたか」という情報を詳細に記録し、管理する役割を担っています。
この記録のおかげで、私たちは「〇月〇日のあの時の状態に戻したい」といった場合に、簡単にファイルを以前の状態へ戻すことが可能になります。
もしGitがなければ、ファイルを変更するたびにコピーを保存したり、手動で履歴を管理したりと、非常に手間がかかってしまうでしょう。Gitは、そうした煩雑な作業から私たちを解放してくれる、開発に欠かせないツールなのです。
Gitでできること3選
Gitを使いこなすことで、開発は格段に効率的かつ安全になります。ここでは、Gitの代表的な機能を3つご紹介します。
①ファイルのバージョン管理ができる
Gitの最も基本的な機能は、ファイルのバージョン管理です。
Gitを使えば、任意のタイミングでファイルの現在の状態を「スナップショット」として記録できます。このスナップショットには、以下の詳細な情報(メタ情報)が自動的に記録されます。
- いつ(タイムスタンプ)
- 誰が(変更した人)
- どんな変更をしたか(変更内容)
これにより、ファイルを大量に保存したり、手動で変更履歴を管理したりする手間が省けます。
例えば、新しい機能を追加する際に、誤って既存のコードを壊してしまったとしても、Gitに記録された過去のバージョンを参照することで、簡単に問題箇所を特定し、修正することができます。
②以前のファイルの状態に戻せる
開発中に予期せぬエラーが発生したり、新しい変更が期待通りに動作しなかったりすることは少なくありません。
しかし、Gitに記録されたメタ情報を使って、コマンド一つで簡単に以前のファイルの状態に戻すことができます。
例えば、「一週間前のあの時点のコードに戻したい」と思えば、記録されている日付を指定するだけで、ファイルをその時点の状態に戻せます。
③チームでスムーズな開発ができる
複数人で一つのプロジェクトを共同で開発する際、厄介な問題の一つがファイルの衝突(コンフリクト)です。
これは、複数の開発者が同時に同じファイルを編集し、互いの変更を上書きしあってしまうことで発生します。Gitは、このような衝突を未然に防ぎ、チームでの開発をスムーズに進めるための強力な機能を提供します。
Gitは、他のメンバーの変更を自動的に検知し、あなたがファイルを上書きしようとした際に警告を発してくれます。これにより、意図しない上書きやエラーの発生を防止できます。
また、各メンバーが自分の変更をGitで管理し、後からそれらの変更を統合する仕組みがあるため、コンフリクトを解決しながら効率的に共同開発を進めることができます。
GitHubとは?
GitHubは、Gitで管理しているコードを複数人で共有したり、編集したりする際に使用するオンラインツールです。簡単に言えば、Gitで作成した変更履歴をチームで共有し、共同作業をより円滑に進めるための「クラウド上のリモートリポジトリ」です。
Git自体は個人のPC(ローカル環境)で動作するツールですが、GitHubを利用することで、コードをオンライン上にアップロードして公開が可能になります。
パブリックリポジトリ、プライベートリポジトリのどちらにアップロードするかも指定できます。
個人で開発を進める場合でも、GitHubにコードを置いておくことで、PCの故障や紛失といったトラブルからコードを守り、いつでもどこからでもアクセスできるようになるため、今や開発者にとって必須のツールとなっています。
GitHubでできること3選
GitHubは、Gitの機能をさらに拡張し、開発者間のサポートする様々な機能を提供しています。
①コードの共有が可能
GitHubの最も重要な機能の一つは、コードの共有です。
もともとGit単体でのコード共有は手間がかかることが多かったため、2008年頃にGitHubが開発されました。GitHubを使えば、チームメンバーはインターネットを通じて最新のコードに簡単にアクセスし、自分のローカル環境にダウンロードすることができます。
これにより、地理的に離れた場所にいるメンバー同士でも、スムーズに共同開発を進めることが可能になります。
個人開発の場合でも、GitHubにコードをアップロードしておくことで、友人や知人と簡単にコードを共有したり、自分のポートフォリオとして公開したりすることができます。
②コードレビューができる
GitHubは、コードレビューを効率的に行うための優れた仕組みを提供しています。
開発者が新しい機能を追加したり、バグを修正したりした際には、その変更内容をチームに提案する「プルリクエスト」と呼ばれる機能を使います。
プルリクエストを通じて、他の開発者は提案されたコードの変更点を確認し、コメントを残したり、改善点を提案したりすることができます。
レビュアーが「OK」と判断すれば、そのコードはプロジェクトのメインのコードベースに取り込まれます。
この一連のプロセスがGitHub上で視覚的にわかりやすく行えるため、多くのユーザーに利用されています。
③オープンソースソフトウェアに参加
GitHubは、世界中の開発者が協力してソフトウェアを開発する「オープンソースソフトウェア(OSS)」の中心的なプラットフォームでもあります。GitHubを通じて、世界中の高品質なコードを閲覧し、学習することができます。
また、気に入ったオープンソースプロジェクトがあれば、自分のアプリケーション開発に利用することも可能です。
Gitの全体像
GitとGitHubのそれぞれの役割について理解が深まったと思います。
ここでは、開発におけるGitとGitHubの連携の全体像を以下に示します。
ローカル環境(自分のPC)
↑記録 ↓反映
ローカルリポジトリ(自分のPC内のGit管理領域)
↑取得 ↓アップロード
GitHub(クラウド上のリモートリポジトリ)
↑公開. ↓
他の人のローカルリポジトリ
↑反映 ↓
他の人のローカル環境
この図が示すように、まず自分のPC(ローカル環境)でコードを書き、その変更をGitを使ってローカルリポジトリに記録します。
その変更をGitHub(クラウド上のリモートリポジトリ)にアップロードすることで、他のチームメンバーとコードを共有します。他のメンバーも同様に、GitHubから最新のコードを取得し、自分のローカル環境で開発を進めることができます。
Gitの基本コマンド
Gitを使いこなす上で、基本的なコマンドを覚えることは必須です。
ここでは、開発で頻繁に使う7つのコマンドをご紹介します。
これらのコマンドを理解すれば、Gitを使ったバージョン管理がスムーズに行えるようになります。
① git init
git init
プロジェクトを開始する際に、そのフォルダをGitで管理すると宣言するためのコマンドです。
これを実行すると、そのフォルダ内にローカルリポジトリ(Gitが変更履歴を管理するための特別な領域)が作成され、Gitの管理が開始されます。
このコマンドはプロジェクトごとに初回のみ使用します。
② git commit
git commit -m “メッセージ内容”
変更内容をGitのローカルリポジトリに正式に記録するためのコマンドです。
「-m
」オプションの後に続くダブルクォーテーション内には、その変更がどのような内容であるかを簡潔にまとめたメッセージを記述します。
例えば、「新機能Aを追加」や「バグBを修正」といったように、後から見て何を変更したか分かりやすいメッセージを心がけましょう。
③ git add
変更を、コミットする準備をするためのコマンドです。
git add <ファイル名>
git add .
git add <ファイル名>
:特定のファイルをステージにアップロードします。git add .
:全ての変更されたファイルを一括でステージにアップロードします。
このステージに上げる作業を挟むことで、関連する変更のみをコミットに含めることができ、変更履歴をよりきれいに保つことが可能になります。
ワークツリー(自分のPCのコード、ファイル)
↓git add
ステージ (リポジトリに上げる前の一時保管場所)
↓git commit
GitHub(クラウド上のリモートリポジトリ)
Gitには、PC上の作業領域である「ワークツリー」と、コミットする前に変更を一時的に保管する「ステージ」という概念があります。git add
コマンドは、ワークツリーでの変更をステージにアップロードする役割を担います。
④ git status
git status
現在のリポジトリの状態を確認するためのコマンドです。どのファイルが変更されたか、どのファイルがステージに追加されたか、どのファイルがまだ追跡されていないかなどを一覧で表示してくれます。
コミットする前に、意図しない変更が含まれていないかを確認する際に役立ちます。
⑤ git diff
git diff
ファイルに加えられた変更内容の詳細を確認するためのコマンドです。
git status
では「どのファイルが変更されたか」は分かりますが、「具体的にどこがどのように変更されたか」までは分かりません。git diff
を使うことで、変更前と変更後のコードの差分を詳細に確認できます。
各コードは以下の流れで使用します。
- コードやファイルを変更
git diff
やgit status
で変更内容に誤りがないか確認- 問題なければ
git add
でステージに上げるgit commit
で記録する
⑥ git log
git log
これまでにコミットされた変更履歴を一覧で表示するためのコマンドです。
Gitの最大のメリットの一つは、詳細な変更履歴をいつでも確認できることですが、git log
はこの履歴を見るためのコマンドです。
⑦ git restore
git restore <ファイル名>
ファイルに加えた変更を元に戻すためのコマンドです。
誤ってファイルを編集してしまった場合や、特定のファイルを以前の状態に戻したい場合に利用します。
GitHubの全体像
GitHub上での共同作業に不可欠な「ブランチ」という概念を交えながら、GitHubの全体像を解説します。
ローカルリポジトリ(あなたのPC)
↑プル ↓プッシュ プルリクエスト
GitHub(クラウド上のリモートリポジトリ)
↑プッシュ ↓プル
他の人のローカルリポジトリ
GitHubの基本用語を解説
GitHubを使った共同開発での重要な用語を解説します。
ブランチ
ブランチとは、開発の作業を枝分かれ(分岐)させて行うための機能です。
例えるなら、メインの道路(メインブランチ)から脇道(新しいブランチ)に入って作業を進め、作業が終わったら再びメインの道路に戻るようなイメージです。
通常、プロジェクトの安定版コードは「
main
」や「master
」といったブランチで管理されます。機能の追加、バグ修正は、メインのブランチから新しいブランチを作成し、新しいブランチ内で作業を進めます。
これにより、メインのコードに影響を与えることなく、並行して異なる作業を進められます。
プッシュ
プッシュは、ローカルリポジトリ(自分のPC)で行った変更を、GitHub上にあるリモートリポジトリにアップロードする操作です。
あなたがブランチでコードを作成したり編集したりした後、「この変更をGitHubに反映したよ!」と伝えるのがプッシュの役割です。
これにより、変更がGitHub上で共有され、他のチームメンバーも変更を確認できるようになります。
プル
プルは、GitHubのリモートリポジトリにあるファイルやコードを、ローカルリポジトリにダウンロードしてくる操作です。
例えば、他のチームメンバーがGitHubに新しい変更をプッシュした場合、あなたはプルを実行することで、その最新の変更を自分のPCに取り込み、作業を開始することができます。
プルリクエスト
プルリクエストは、ブランチで行った変更を、メインのブランチ(例えばmain
ブランチ)に取り込んでもらいたいときに、その変更内容を他のメンバーにレビューしてもらうための提案です。
「この機能を追加しました」「このバグを修正しました。このファイルを確認してください」というメッセージと共にプルリクエストを作成すると、他のメンバーがその変更内容をチェックし、問題がなければメインのブランチに「マージ」(統合)してくれます。
GitHubのコマンド
GitHubを効果的に使うためには、ブランチ操作に関連するGitコマンドを覚えることが重要です。
ブランチを作成する
新しい機能を開発したり、バグを修正したりする際には、まず新しいブランチを作成します。
git branch <ブランチ名>
例えば、feature
という名前のブランチを作成したい場合は、
git branch feature
と入力します。
ブランチの一覧を表示する
現在存在するブランチの一覧を確認したいときは、以下のコマンドを使います。
git branch
このコマンドを実行すると、現在アクティブなブランチ(現在作業中のブランチ)には*
が付きます。
ブランチを切り替える
ブランチを作成しただけでは、そのブランチでの作業は始まりません。作成したブランチに移動して、初めてそのブランチでの作業が可能になります。
git switch <ブランチ名>
例えば、feature/new-login
ブランチに切り替えたい場合は、git switch feature/new-login
と入力します。
また、ブランチを作成と同時にそのブランチへ切り替える便利なコマンドもあります。
git switch -c <ブランチ名>
「
-c
」は「Create」の頭文字
ブランチをメインに取り込む(マージ)する
開発が完了したブランチの変更内容を、メインのブランチ(例: main
ブランチ)に取り込みたい場合に使用します。
git merge <マージしたいブランチ名>
このコマンドを実行する前に、まず取り込みたい先のブランチ(例: main
ブランチ)に切り替えておく必要があります。例えば、feature/new-login
ブランチの変更をmain
ブランチに取り込みたい場合は、git switch main
でmain
ブランチに移動した後、git merge feature/new-login
を実行します。
プルリクエストを送る
GitHubを利用したチーム開発では、自身の変更をメインのコードに統合してもらうために「プルリクエスト」を送るのが一般的です。
作成・編集したコードを他の開発者に見てもらい、レビューを経て問題がなければプロジェクトに取り込んでもらうための、GitHubの重要な機能です。
プルリクエストを行うためのGitコマンドはなく、GitHubのウェブインターフェース上で行う操作になります。
まとめ
この記事では、現代のソフトウェア開発に不可欠なGitとGitHubについて、その基本的な概念から具体的な使い方までを解説してきました。
Gitは、あなたのコードの変更履歴を正確に記録・管理するための強力なバージョン管理システムです。ファイルのバージョン管理、以前の状態への復元、そして複数人での共同開発における衝突の回避といった、開発を効率的かつ安全に進めるための基盤を提供します。
そして、GitHubは、そのGitで管理されたコードをインターネット上で共有し、チームでの共同作業をさらに円滑にするためのオンラインプラットフォームです。コードの共有、レビュー機能、そして世界中のオープンソースプロジェクトへの参加を可能にすることで、開発の可能性を大きく広げます。
これらのツールは、個人の開発効率を向上させるだけでなく、チームでのスムーズな連携を可能にし、プロジェクトの品質を高める上でも欠かせません。GitとGitHubを使いこなすことは、現代の開発者にとっての必須スキルであり、あなたの開発キャリアを大きく前進させることでしょう。
この記事が、GitとGitHubの理解を深め、今後の開発に役立つ一助となれば幸いです。
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