「クラウドでデータベースを使いたいけど、何から始めればいいかわからない…」
「Azure SQL Databaseに興味はあるけれど、設定や操作が難しそう…」
そんな風に感じている方も多いのではないでしょうか? Microsoft Azureが提供する「Azure SQL Database」は、インフラ管理の手間なく利用できる反面、初めて触れる方にとってはデプロイや接続方法が最初のハードルとなりがちです。
この記事では、Azure SQL Database初心者の方に向けて、最初のステップである「データベースの作成(デプロイ)」から、「VScodeを使った接続方法」、そして「基本的なデータの操作」まで、一連の流れをわかりやすく丁寧に解説します。この記事を読めば、Azure SQL Databaseを使いこなすための第一歩を確実に踏み出すことができます。
Azure SQL Databaseとは
Azure SQL Databaseは、Microsoft Azure が提供するフルマネージド型のリレーショナルデータベースサービスで、SQL Server の機能をクラウド上でそのまま活用できるようにしたサービスです。
このサービスを使うことで、ユーザーは自分でサーバーを構築したり、パッチを適用したり、バックアップのスケジュールを管理したりする必要がありません。Microsoft がインフラやセキュリティ、可用性の面をすべて管理してくれるため、開発者はアプリケーションの構築や運用に集中できます。
Azure SQL Databaseの特徴
Azure SQL Databaseは、Microsoftが提供するクラウドベースのリレーショナルデータベースサービスで、信頼性・柔軟性・安全性に優れた設計が魅力です。以下のような特徴により、開発から運用までの負担を大幅に軽減し、効率的なシステム構築を支援します。
✅ 高可用性
障害が発生してもサービスが止まらないよう、自動復旧の仕組みが標準搭載されています。ビジネスクリティカルなシステムにも安心して導入できます。
✅ スケーラブル
処理量やアクセス数の増減に応じて、リソースを柔軟にスケールアップ・ダウン可能。パフォーマンスとコストのバランスを最適化できます。
✅ セキュリティ対策万全
データ暗号化、アクセス制御、脅威検出など、エンタープライズレベルのセキュリティ機能が標準で利用可能。不正アクセスや情報漏洩からしっかり守ります。
✅ バックアップ自動化
定期的なバックアップが自動で行われるため、万が一のデータ損失にも迅速に対応可能。復元作業も簡単です。
✅ サーバーレスオプションあり
アクティブなタイミングだけ自動でリソースが割り当てられるサーバーレスモードに対応。アクセスが少ない時間帯はコストを大きく削減できます。
SQLとMySQLの違いとは?
「SQLとMySQLってどう違うの?」と疑問に思ったことはありませんか?
どちらもリレーショナルデータベースに関係していますが、役割はまったく異なります。
SQLは「言語」、MySQLは「システム」
SQL は、データベースにアクセスしたり、データを操作したりするための標準的な言語です。
たとえば「この商品データを表示して」といった指示をデータベースに出すときに使われます。
一方、MySQL はそのSQLを使って操作できるリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の一つです。
つまり、「SQLを使う場所」がMySQL、というイメージです。
SQL ServerとMySQLの違い
SQLを使えるRDBMSは1つだけではありません。有名なものに「Microsoft SQL Server」があります。MySQLとよく比較されるので、その違いをざっくり整理しましょう。
項目 | Microsoft SQL Server | MySQL |
---|---|---|
開発元 | Microsoft | Oracle(オープンソース) |
対応OS | 主にWindows(Linuxも対応) | Linux中心、ほぼ全OSに対応 |
コスト | 基本は有料(Express版あり) | 無料(有償サポートあり) |
スケーラビリティ | 高い、大規模システム向け | 軽量で中小規模に向いている |
プログラミング言語対応 | .NET系に強い | 幅広く多言語対応 |
主な用途 | 企業の業務システム、BI | Webアプリ、ブログ、ECサイトなど |
セキュリティ | 強固(暗号化・アクセス制御など) | 標準的(設定次第で強化可能) |
どっちを選ぶべき?MySQL vs SQL Server
MySQLとSQL Server、結局どちらを選べばいいの?
それはあなたのプロジェクトの目的や予算、環境によって変わります。以下のポイントを参考にしてみてください。
MySQL が向いているケース
- Webアプリやスタートアップ開発
- コストを抑えたい(無料で使いたい)
- Linux サーバー中心の環境
- オープンソースとの親和性を重視したい
- 軽量で高速な処理が必要な中小規模のシステム
例:ブログサイト、ECサイト、モバイルアプリのバックエンド、スタートアップの MVP開発など。
SQL Server が向いているケース
- 大企業や基幹業務システムでの利用
- 高度なセキュリティや分析機能が必要
- Microsoft製品との連携(Power BI, Azure, .NETなど)
- 大規模データや高負荷トランザクションに耐えられる設計が必要
例:ERP、CRM、業務管理システム、BIツールを活用した分析基盤など。
どちらのデータベースも優れた選択肢ですが、大切なのはプロジェクトの特性に合わせて選ぶこと。
「何を作るのか」「誰が運用するのか」「将来的にどうスケールするのか」を考えて、最適なツールを選びましょう!
Azure SQL Databaseをデプロイする手順
Azure SQL Databaseは、数ステップで簡単にクラウドにデプロイできます。以下は、Azureポータルを使ってデータベースを作成する一般的な手順です。
✅ ステップ1:Azureポータルにサインイン
まずは、Azureポータル にアクセスし、Microsoftアカウントでサインインします。
✅ ステップ2:SQL サーバーを先に作成する
既にSQL サーバーを作成済みの場合は、この手順は不要です。
- 左メニューまたは検索バーで「SQL サーバー」を検索し、サービスを選択。
- 「+ 作成」をクリック。
- 以下を入力:
- サブスクリプション:対象のサブスクリプションを選択
- リソースグループ:既存のものを選ぶか、新規作成
- サーバー名:一意の名前
- サーバー管理者ログイン:任意のログイン名
- パスワード:強力なパスワードを設定
- 場所(リージョン):データを置きたい場所(例:Japan East)
- Azure サービスおよびリソースにこのサーバーへのアクセスを許可する:オンにする
- 「確認および作成」→「作成」をクリック
IDとパスワードは忘れないようにメモ帳等にメモしてください。

✅ ステップ2:「SQL データベース」を選択
左側メニューまたは検索バーで「SQL データベース」と入力し、サービスを選択します。

✅ ステップ3:「SQL データベースの作成」をクリック
表示された画面で「+ SQL データベースの作成」ボタンをクリックします。
✅ ステップ4:基本情報を入力
- サブスクリプション:使用するAzureサブスクリプションを選択
- リソースグループ:既存のものを選ぶか、新しく作成
- データベース名:任意の名前を入力(例:
mydatabase
) - サーバーの作成:作成済みのSQLサーバーを選択

✅ ステップ5:コンピューティングとストレージを設定
- 価格レベルを選択(例:Basic、Standard、Premium、またはサーバーレス)
→ 費用や性能要件に合わせて柔軟に設定できます。

✅ ステップ6:そのほかの設定
- バックアップの構成、
- ネットワーク設定(アクセス許可の構成)などを調整します。
新たにプライベートエンドポイントを作成

データベースの照合順序は日本語対応しているものを使用するため、Japanese_XJIS_100_CS_AS_KS_WS_SC
を設定します。

✅ ステップ7:確認と作成
設定内容を確認し、「作成」をクリックすると、デプロイが開始されます。
数分でSQL Databaseとサーバーが自動で構築されます。
Visual Studio Code(VScode)を使ってAzure SQL Databaseに接続
前提準備
- Azure SQL Databaseがすでに作成されていること
- サーバー名 / ユーザー名 / パスワードを把握していること
- Visual Studio Codeがインストールされていること(公式サイトからダウンロード可能)
① 拡張機能のインストール
- VS Code を開く
- 拡張機能アイコン(左の四角いアイコン)をクリック
- 「mssql」で検索して、SQL Server (mssql) をインストール

② 接続プロファイルの作成
「.sql」ファイルを作成し、VScodeでファイルを開きます。

Ctrl + Shift + P でコマンドパレットを開き、MS SQL: Connect を選択

「+接続プロファイルの作成」を選択
- 以下の情報を入力:
- サーバー名:localhost, 127.0.0.1, AzureSQL.database.windows.netなど
- データベース名(任意):master など
- 認証タイプ:SQL Login or Windows Authentication
- ユーザー名・パスワード
- 保存名(任意)
サーバー名はAzureポータル上で確認できます。

IPアドレスが許可されていない場合は、下記のようにエラーがでます。

このエラーが出た場合は、画面の指示に従い、ファイアウォール規則を作成してください。
「mssql: プロファイルが作成され、接続されました」とポップアップが出ていれば成功です。

③ 接続確認
SELECT @@VERSION;
上記クエリでテストを実行します。クエリ入力後に右上にある三角▶️の実行ボタンを押してください。
画像のように結果が出力されていれば成功です。

初心者向けSQLデモ:Azure SQL Database編
SQLデータベースを作成し、接続の確認まで行ってきました。
この記事の最後に、SQLクエリの基本的なコマンドを解説します。
【目的】
SQLの基本操作(作成・追加・更新・削除・検索)を体験する
VScodeでの操作もセットで体験する
🔧 準備するもの
- Azure SQL Database(すでにデプロイ済)
- VScode(接続済)
- 接続ユーザーの権限が適切であること(
CREATE
,INSERT
,SELECT
など)
① テーブルを作成(CREATE)
CREATE TABLE Users (
Id INT PRIMARY KEY IDENTITY(1,1),
Name NVARCHAR(100),
Email NVARCHAR(100),
Age INT
);
CREATE TABLE
で新しいテーブルを作成します。IDENTITY(1,1)
は自動採番(主にSQL Server)。NVARCHAR(100)
は日本語対応の文字列型。
② データを追加(INSERT)
INSERT INTO
で新しいデータをテーブルに追加します。
- 3人のサンプルユーザーを登録
INSERT INTO Users (Name, Email, Age) VALUES
('田中 太郎', 'tanaka@example.com', 28),
('佐藤 花子', 'sato@example.com', 35),
('山本 一郎', 'yamamoto@example.com', 42);
③ データを取得(SELECT)
SELECT * FROM Users;
SELECT
はデータの取得に使います。*
は「すべての列」を意味します。
絞り込みや並び替えも可能です。
SELECT * FROM Users WHERE Age > 30 ORDER BY Age DESC;
④ データを更新(UPDATE)
UPDATE
で既存のデータを変更。(佐藤 花子さんの年齢を24歳にします。)WHERE
を指定しないと全行が更新されるので注意!
UPDATE Users
SET Age = 24
WHERE Name = '佐藤 花子';
SELECT * FROM Users;
⑤ データを削除(DELETE)
- 特定の条件でデータを削除します。
- これも
WHERE
を忘れると全データが消えるので要注意。
DELETE FROM Users
WHERE Name = '山本 一郎';
SELECT * FROM Users;
⑥ テーブルを削除(DROP)※任意
DROP TABLE
でテーブルそのものを削除します。
テーブル内のすべてのデータと構造が消えます(元に戻せません)。
DROP TABLE Users;
まとめ:Azure SQL Databaseの第一歩を踏み出そう
この記事を通して、Azure SQL Databaseのセットアップから基本的な操作までを、手順を追って体験いただけたかと思います。最初は難しく感じるかもしれませんが、実際に手を動かしてみることで、クラウドデータベースが意外と身近なものであること、そしてその利便性の一端を感じていただけたのではないでしょうか。
さらに応用的な機能や管理方法を探求していくことで、Azure SQL Databaseの可能性をより深く理解し、活用できるようになるでしょう。
まずは、今回学んだデプロイ、接続、基本操作を何度か繰り返し試してみて、自信を持ってAzure SQL Databaseを扱えるようになることを目指しましょう。この記事が、皆さんのクラウドデータベース活用の確かな一歩となれば幸いです。
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