Azure初心者は何から始める?クラウドの基礎とVM・App Service・VNetの選び方

Azure

「Azureを勉強しよう」と思って公式ドキュメントを開いた瞬間、VM・App Service・VNet・サブスクリプション…と知らない言葉が一気に押し寄せてきて、どこから手をつければいいのか分からなくなった——そんな経験はありませんか。

サービスが多すぎて、そもそも自分が何を選べばいいのか分からない…。個別の記事を読む前に、全体の地図がほしい!

この記事は、これからAzureを学ぶ初心者エンジニアが「最初に手に入れるべき地図」です。個別のサービス記事(App Serviceなど)を読む前に、次の6つを順番に腑に落とします。読み終えたとき、あなたは「どのサービスを、なぜ選ぶのか」を自分の言葉で説明できるようになります。

  • クラウドとは何か(サーバーを買わずに借りる、という発想)
  • IaaS / PaaS / SaaS の違い(どこまで自分が管理するか)
  • Azureの構造(テナント→サブスク→リソースグループ→リソース)
  • VM か App Service か(初心者が最初に迷う二択)
  • VNetとは(クラウド上の私設ネットワーク)
  • 操作の3手段(ポータル/CLI/IaC)と、次に読むべき記事

各セクションの最後に「✅ ここが説明できればOK」という自己チェックの目安を置いています。学習の到達度確認に使ってください。それでは、地図を広げていきましょう。

クラウドとは何か(サーバーを買わずに、必要な分だけ借りる)

クラウドとは、サーバーやネットワークといったITリソースを「自分で買って持つ」のではなく、インターネット越しに「必要な分だけ借りて、使った分だけ払う」仕組みです。

従来のやり方(オンプレミス=自社でサーバーを持つ)では、Webサイトを1つ公開するだけでも、サーバー機を購入し、置き場所を用意し、電源と冷却(空調)を確保し、故障したら自分で部品を交換する…という一連の面倒がついて回りました。しかもサーバーは買った瞬間から減価償却が始まる高い買い物で、アクセスが増えても簡単には増やせません。

クラウド(Azure)を使うと、この面倒がまるごと消えます。電源・冷却・故障交換・置き場所の確保——これらは全部Microsoftのデータセンター側が面倒を見てくれて、あなたは画面をポチポチするだけで数分後にサーバーが手に入ります。この「借りる」発想がもたらす利点は、大きく次の3つです。

  • 従量課金:使った分だけ支払う。最初に大きな設備投資(サーバー購入)が要らず、小さく始めて大きく育てられる。
  • スケール(伸縮自在):アクセスが増えたらサーバーを増やし、減ったら減らす。この調整が数クリック(または自動)でできる。
  • 可用性(止まりにくさ):世界中のデータセンターが冗長化されており、1台壊れてもサービスが止まりにくい仕組みが最初から用意されている。

ひとことで言えば、クラウドとは「サーバーを”所有”から”利用”に変える」技術です。この発想の転換が、これから学ぶすべてのサービスの土台になります。

✅ ここが説明できればOK
「クラウドは、サーバーを買わずに必要な分だけ借りる仕組み。電源・冷却・故障交換から解放され、従量課金・スケール・可用性という利点がある」——これを自分の言葉で言えれば、1つ目はクリアです。

IaaS / PaaS / SaaS の違い(どこまで自分が管理するか)

クラウドの「借り方」には段階があります。どこまでを自分が管理し、どこからをMicrosoftが管理するか——この責任範囲の違いで、クラウドサービスは大きく3種類に分けられます。それが IaaS / PaaS / SaaS です。

いきなり英語3文字が並ぶと身構えてしまうので、まずは住まいの例えで感覚をつかみましょう。

  • IaaS=土地を借りて自分で家を建てる:土地(サーバーの箱)は借りるが、家(OS・ミドルウェア・アプリ)は全部自分で建てて管理する。自由度は最大だが、面倒も最大。
  • PaaS=家具付きマンションに住む:建物・設備・家具(OS・ミドルウェアの土台)は管理会社(Microsoft)が用意済み。あなたは荷物=アプリのコードを持ち込むだけで住み始められる。
  • SaaS=ホテルに泊まる:部屋もアメニティも全部そろっていて、あなたは使うだけ。中の管理は一切しない。

この「自分が管理する範囲」を表にすると、違いが一目で分かります。下にいくほど(SaaSに近づくほど)自分の管理は減り、Microsoftの管理が増えます。

種類自分が管理するものMicrosoftが管理するものAzureの例
IaaSOS・ミドルウェア・アプリ・データ物理サーバー・仮想化・電源・ネットワーク基盤Virtual Machines(VM)
PaaSアプリ・データOS・ミドルウェア・実行環境・基盤App Service
SaaSデータ・設定(使うだけ)アプリを含めほぼ全部Microsoft 365

ここで押さえてほしい本質は、「上(IaaS)に行くほど自由で面倒、下(SaaS)に行くほど楽だが決められた枠内」というトレードオフです。エンジニアとしての学習では、まずPaaSの楽さを体感し、必要に応じてIaaSの自由度を使う——という順番が理解しやすいです。

「自分がどこまで面倒を見るか」の線引きがIaaS/PaaS/SaaSの正体。ここが分かると、次のVM vs App Serviceの二択が一気にクリアになるよ!

✅ ここが説明できればOK
「IaaS/PaaS/SaaSは”自分がどこまで管理するか”の違い。IaaS=土地を借りて家を建てる(VM)、PaaS=家具付きマンション(App Service)、SaaS=ホテル(Microsoft 365)」——これを説明できれば、2つ目はクリアです。

Azureの構造(テナント→サブスクリプション→リソースグループ→リソース)

Azureを触り始めると、テナント・サブスクリプション・リソースグループという「入れ物」の言葉が出てきます。これはAzure全体を整理するための階層構造(フォルダの入れ子のようなもの)です。上から順に、こういう関係になっています。

■ テナント(Microsoft Entra ID)= 組織そのもの
│    「誰がログインできるか」を管理する会社の枠
│
└─■ サブスクリプション = 課金と契約の単位
   │    「請求書がここ単位で来る」お財布
   │
   └─■ リソースグループ = 案件ごとのフォルダ
      │
      └─● リソース = 実際に動くモノ
             [VM]  [App Service]  [VNet]  …

それぞれの役割を、上から順に整理します。

  • テナント(Microsoft Entra ID):組織そのものを表す一番外側の枠。「誰がAzureにログインできるか」というユーザー・権限を管理します。会社に1つ、というイメージ。
  • サブスクリプション課金と契約の単位。請求書はここ単位で発行されます。「本番用」「検証用」のように、お財布を分ける目的で複数持つこともあります。
  • リソースグループ:関連するリソースをまとめるフォルダ。ふつうは「1つのシステム=1つのリソースグループ」でまとめ、不要になったらフォルダごと一括削除できます。
  • リソース:VM・App Service・VNet・データベースなど、実際に動く”モノ”そのもの。あなたが作るのは基本この一番内側です。

もう一つ、リソースを作るときに必ず選ぶのがリージョンと可用性ゾーンです。リージョンは「東日本」「西日本」のようなデータセンターの地理的な場所で、ユーザーに近い場所を選ぶと通信が速くなります。可用性ゾーンは、1つのリージョンの中にある物理的に離れた複数のデータセンターのこと。ゾーンをまたいで配置すると、片方のデータセンターが災害で止まっても、もう片方でサービスを継続できます(=可用性が上がる)。

✅ ここが説明できればOK

Azureはテナント
→サブスクリプション(課金単位)
→リソースグループ(フォルダ)
→リソース(実物)の階層。

リソースはリージョン(場所)に置き、可用性ゾーンで冗長化できる」

——これを説明できれば、3つ目はクリアです。

VM か App Service か(初心者が最初に迷う二択)

ここがこの記事の核心です。「AzureでWebアプリを動かしたい」と思ったとき、初心者が最初にぶつかる二択が Virtual Machines(VM)App Service です。前のセクションの言葉を使えば、VM=IaaS(土地を借りて家を建てる)App Service=PaaS(家具付きマンション)。この違いが、そのまま選び方に直結します。

観点VM(IaaS)App Service(PaaS)
自分で管理するものOS・パッチ・ミドルウェア・アプリアプリのコードだけ
例え土地を借りて家を建てる家具付きマンションに住む
向くケース特殊なOS設定・独自ミドルウェア・レガシー移行・OSレベルの自由が要る時普通のWebアプリ/API を手早く公開したい時
学習の重さ重い(OS運用・セキュリティも自分事)軽い(土台はMicrosoftが管理)
スケール自分で設計・構成する設定だけで自動スケール可

結論から言います。Webアプリを普通に動かすなら、まずApp Service(PaaS)を選ぶのが正解です。理由はシンプルで、OSのパッチ当てやミドルウェアの保守といった「土台の面倒」をMicrosoftに丸投げできるため、あなたはアプリのコードだけに集中できるからです。VMを選ぶのは、「どうしてもOSレベルで細かい設定をいじりたい」「特殊なミドルウェアを同居させたい」「オンプレのサーバーをそのまま持ってきたい」といった特殊な事情がある時です。

学習の順番としておすすめなのは、「まずApp ServiceでPaaSの楽さを体感 → あえてVMで泥臭さ(OS運用の大変さ)を知る」という流れです。先にVMの面倒を味わってしまうと、そこで挫折しがち。楽な方から入り、後から「なぜPaaSが楽なのか」をVMで実感するのが王道です。

App Serviceの中身(App Service Planや価格レベルの考え方)は、単体で1本の記事にまとめています。この二択でApp Serviceに気持ちが傾いたら、次はこちらを読んでください。

なお、「コンテナで動かしたい」という段階に進むと、App ServiceのほかにContainer AppsやAKSという選択肢も出てきます(これらは本記事の範囲を超えるので、興味が出たら末尾の関連記事へ)。まずは「VMとApp Service、迷ったらApp Service」の一択を体に染み込ませましょう。

✅ ここが説明できればOK
「VM=IaaSでOSまで自分で管理、App Service=PaaSでコードだけに集中。普通のWebアプリならまずApp Service、特殊事情がある時だけVM」——これを説明できれば、4つ目はクリアです。

VNetとは(クラウド上の私設ネットワーク)

VNet(Virtual Network=仮想ネットワーク)とは、Azure上に作る”あなた専用の私設ネットワーク(仮想LAN)”です。VMやデータベースなどのリソースを、この中に置いて安全に通信させます。

イメージとしては、オンプレミスの社内ネットワーク図を、まるごとクラウドに引っ越したものだと考えてください。会社のオフィスにあった「LANケーブルでつながったサーバー室」を、Azureの中に仮想的に再現するのがVNetです。この中にVMを置けば、外部から隔離された安全な区画で通信できます。

VNetを理解するうえで押さえたいキーワードが3つあります。

  • サブネット:VNetという大きな区画を、用途ごとに区切った小部屋。「Web用サブネット」「DB用サブネット」のように分け、通信ルールを部屋ごとに設定します。マンション(VNet)の中の各フロア(サブネット)というイメージ。
  • プライベートIP:VNetの内側だけで通じる住所。VM同士やVMとDBが、外部を経由せず内部だけで安全に会話するときに使います。
  • パブリックIPインターネットから見える住所。外部に公開するリソースにだけ割り当てます。逆に言えば、パブリックIPを付けなければインターネットから直接触られません。

「内側だけの住所(プライベートIP)」と「外から見える住所(パブリックIP)」を使い分けることで、公開する部分と隠す部分を明確に線引きできる——これがVNetによるセキュリティ設計の基本です。たとえばWebサーバーにはパブリックIPを付けて公開し、その裏のデータベースはプライベートIPだけにして外部から一切触れない、という守りの構成が組めます。

もう一点、初心者が混乱しやすいポイントを先回りで。1つのVNetは、単一のリージョン・単一のサブスクリプションの中に閉じます。つまり「東日本リージョンで作ったVNet」は東日本の中の話で、別リージョンや別サブスクとつなぎたい場合は、ピアリングなどの追加の仕組みが必要になります。まずは「VNetはリージョンとサブスクに閉じた私設ネットワーク」と覚えておけば十分です。

VNetはネットワークの土台なので、深掘りすると1本の記事になります。詳しくは専用記事にまとめています。

✅ ここが説明できればOK
「VNetはクラウド上の私設ネットワーク(仮想LAN)。サブネットで区切り、プライベートIP(内側専用)とパブリックIP(外から見える)を使い分ける。単一リージョン・単一サブスクに閉じる」——これを説明できれば、5つ目はクリアです。

操作の3手段(ポータル/CLI/IaC)と、次に読むべき記事

最後に、Azureを「どう操作するか」の3つの手段を押さえておきましょう。この3つは、あなたの成長段階にきれいに対応しています。順番に登っていくのが理想です。

  1. ポータル(GUI)で学ぶ:ブラウザの管理画面をポチポチ操作する方式。何がどこにあるか、どんな設定項目があるかを目で見て学ぶのに最適。まずはここから。
  2. CLI(Azure CLI)で再現するaz コマンドで同じ操作をコマンド化する方式。ポータルで覚えたことを「何度でも同じ手順で再現できる」ようにする段階。手順を人に共有したり、少しずつ自動化したりできる。
  3. IaC(Infrastructure as Code)で自動化する:インフラの構成をコード(設定ファイル)として管理し、まるごと自動で作り直せるようにする段階。チーム開発・本番運用で威力を発揮する。

初心者はまずポータルで全体像をつかむことに集中してください。CLIやIaCは、ポータルで「何を作っているのか」が分かってから触れば十分です。順番を飛ばして最初からコードに手を出すと、「何を自動化しているのか分からない」状態になりがちです。

IaCについてだけ、少し具体例を出しておきます。Azureで広く使われるIaCツールの一つが Terraform です。たとえばリソースグループを1つ作るコードは、こんなに短く書けます(azurerm はAzure用のプロバイダー名です)。

# Terraform(azurerm)でリソースグループを1つ作る例
resource "azurerm_resource_group" "example" {
  name     = "rg-getting-started"
  location = "Japan East"
}

このように、「どんなリソースを、どこに、どんな名前で作るか」をコードで宣言しておけば、いつでも同じ環境を自動で再現できます。ただし繰り返しになりますが、これはポータルとCLIに慣れてからで構いません。今の段階では「IaCという自動化のゴールがある」とだけ知っておけば十分です。

まとめ

Azure学習の地図を、6つのポイントで振り返りましょう。この6つを自分の言葉で説明できれば、あなたはもう「どのサービスを、なぜ選ぶのか」を語れる状態です。

  • クラウドは、サーバーを買わずに必要な分だけ借りる仕組み(従量課金・スケール・可用性)
  • IaaS/PaaS/SaaSは「自分がどこまで管理するか」の違い(VM/App Service/Microsoft 365)
  • Azureはテナント→サブスク→リソースグループ→リソースの階層で、リソースはリージョンに置く
  • Webアプリを普通に動かすならまずApp Service、特殊事情がある時だけVM
  • VNetはクラウド上の私設ネットワーク。サブネットとプライベート/パブリックIPで公開範囲を線引きする
  • 操作はポータル→CLI→IaCの順で成長する

地図が手に入ったら、次は個別のサービスを一つずつ歩いて回る番です。まずは初心者が最初に触れるべき App Service から、下の「あわせて読みたい」を入口に進んでいきましょう。

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