先日、社内から「ChatGPTじゃなくてClaudeを使いたいんだけど、うちのAzure環境で安全に動かせないの?」と相談を受けました。
少し前までなら「ClaudeはAnthropic本家かAWS Bedrock経由ですね」と答えていた案件です。ところが調べ直したら状況が一変していました。2026年6月29日、ClaudeモデルがMicrosoft Foundryで正式にGA(一般提供)になっていたのです。

「ClaudeってAnthropicのAIだよね?なんでMicrosoftのAzureで使えるようになったの?しかもOpenAIと競合してるはずじゃ…?」
まさにこの疑問がスタート地点でした。この記事では、Azureを学ぶインフラ/AI導入担当のエンジニア向けに、①ClaudeがなぜAzureで使えるようになったのか(三者提携の物語)、②何がGAで何がプレビューなのか、③FoundryでデプロイしてMessages APIで呼ぶ最短の流れ、④本家Anthropic APIやBedrockと比べたAzureで使う利点を、公式ドキュメント(Microsoft Learn)を日本語で噛み砕きながら整理します。読み終わるころには「今なぜこれが熱いのか」と「どう試し始めればいいか」がクリアになっているはずです。
結論:ClaudeはAzure上で「正式サービス」として使えるようになった
まず結論から言い切ります。2026年6月29日、AnthropicのClaudeモデルがMicrosoft Foundry(旧Azure AI Foundry)でGA(一般提供)になりました。これまでAzureで生成AIといえばGPT系(Azure OpenAI)が中心でしたが、いまや同じFoundryのカタログから、Anthropicの最新モデルをAzureのガバナンスに乗せたまま本番利用できます。
GA時点で提供されているモデルは次の2つです。
- Claude Opus 4.8:高精度・高難度タスク向けの上位モデル。
- Claude Haiku 4.5:高速・低コスト寄りの軽量モデル。
いずれもMessages API(Anthropic標準のAPI形式)経由で呼び出せます。ここで1点だけ絶対に混同してはいけない区別があります。それが「GA」と「プレビュー」の切り分けです。次の章で正確に押さえます。
なぜAzureでClaudeが? ── 起点は2025年11月の三者提携
「競合のはずのMicrosoftとAnthropicが、なぜ組んだのか」。その答えは、2025年11月18日に発表されたMicrosoft × NVIDIA × Anthropicの三者による戦略提携にあります。この提携が今回のGAの土台です。
ざっくり役割を分けると、こういう構図です。
- Anthropic:Claudeという高性能モデルを提供する頭脳。
- Microsoft(Azure):それを世界中の企業に届ける販売・運用基盤(クラウドとガバナンス)。
- NVIDIA:モデルを動かす計算資源。GPUにはGB300 Blackwell Ultraが使われます。
例えるなら、Anthropicが「一流シェフ」、Azureが「全国チェーンの店舗網とレジ(課金・認証・監査)」、NVIDIAが「最新の厨房設備」です。シェフの料理(Claude)を、いつものAzureという店舗で、いつものレジ(Entra ID認証やコスト管理)で注文できるようになった、というのが今回の本質です。ユーザー企業からすれば「AIの調達先を増やすために新しい契約や別基盤を用意しなくていい」のが大きなメリットです。

「なるほど、Azureのいつもの認証やコスト管理のまま、GPTだけじゃなくClaudeも選べるようになったってことか」
重要:GAとプレビューの区別を正確に押さえる
ここが本記事で一番大事なところです。「ClaudeがFoundryでGA」と言っても、GAなのは”Azureがホストするデプロイ形態”であって、すべてのパターンがGAというわけではありません。提供形態には次の2つがあり、成熟度が違います。
| 提供形態 | 推論を動かす場所 | 2026/6/29時点のステータス |
|---|---|---|
| Azureホスト版 | Azure(Microsoft)のインフラ上 | GA(一般提供) |
| Anthropicインフラ版 | Anthropic側のインフラ上 | プレビュー |
つまり本番採用を検討するなら、まずはGAされている「Azureホスト版」を前提に設計するのが安全です。プレビュー形態はSLAや仕様変更のリスクがあるため、検証用途にとどめる判断がしやすくなります。この区別をあいまいにしたまま「ClaudeはFoundryでGAらしい」と社内展開すると、後で「実はその構成はプレビューだった」という事故につながります。提案資料には必ず”どちらの形態か”を明記しましょう。
使い始める最短の流れ ── Foundryでデプロイ → Messages APIで呼ぶ
実際の使い始めは、Azure OpenAIを触ったことがあれば驚くほど素直です。「Foundryでモデルをデプロイ → エンドポイントに対してMessages API形式でリクエストを送る」という2ステップに集約されます。流れを左揃えのツリーで示します。
- 1. Microsoft Foundry でリソース/プロジェクトを用意する
- ├─ モデルカタログから Claude Opus 4.8 または Claude Haiku 4.5 を選ぶ
- └─ デプロイして、リソース固有のエンドポイントを得る
- 2. 認証情報を用意する
- ├─ Entra ID(推奨:キーレスでガバナンス向き)
- └─ または APIキー(手軽に試す用)
- 3. Messages API形式でリクエストを送る
- └─ Python / JavaScript / REST から呼び出せる
エンドポイントの形
呼び出し先のエンドポイントは、Anthropicの/v1/messagesをAzure上に載せた形になっています。<resource> の部分が自分のリソース名です。
https://<resource>.services.ai.azure.com/anthropic/v1/messages
ポイントは、パスに /anthropic/v1/messages が含まれること。Azure OpenAIの /openai/deployments/... とは別系統のパスで、Anthropic標準のMessages APIをそのままの作法で叩ける設計になっています。
呼び出しに使えるもの
- Python / JavaScript / REST:いずれもMessages API形式でリクエスト可能。
- AnthropicのFoundry向けSDK:Azure上のClaudeを呼ぶために用意されたSDK。
- Azure-Samples の claude スターターキット:まず動かして確かめたいときの雛形として使える。
対応している主な機能
GA時点で、単なる文章生成にとどまらず、実務で効く機能が揃っています。
- Messages API:会話・指示ベースの標準API。
- prompt caching(プロンプトキャッシュ):長い共通プロンプトを再利用してコストと遅延を削減。
- extended thinking(拡張思考):モデルにじっくり推論させて難問の精度を上げる。
- tool streaming(ツールストリーミング):ツール呼び出しの結果を逐次受け取れる。
この記事では概要に絞るため実装コードは深追いしませんが、「Azure OpenAIのエンドポイントの向き先とAPI作法がAnthropic版に変わるだけ」と捉えれば、既にAzureで生成AIを触っている人ほどスムーズに移行できます。Foundryでのデプロイやリソース・認証まわりの基礎は、当ブログの入門シリーズで別途詳しく解説しています(末尾のリンク参照)。
本家Anthropic API・Bedrockと何が違う? Azureで使う利点
「同じClaudeなら、本家AnthropicのAPIやAWS Bedrockで使うのと何が違うの?」という疑問には、こう答えられます。モデルの中身は同じでも、”どのクラウドのガバナンスに乗せられるか”が違うのです。企業利用では、この土台の違いが導入可否を左右します。
| 観点 | Anthropic本家API | AWS Bedrock | Microsoft Foundry |
|---|---|---|---|
| 認証・ID管理 | APIキー中心 | IAM | Entra ID/APIキー |
| ガバナンス基盤 | Anthropic側 | AWS側 | Azureに統合 |
| 相性が良い組織 | 個人・小規模 | AWS中心の企業 | Azure/M365中心の企業 |
Azureで使う最大の利点は、すでに全社で使っているAzureの認証・権限・監査・コスト管理の仕組みに、Claudeをそのまま乗せられることです。具体的には次のような場面で効きます。
- Entra IDでキーレス認証:APIキーの配布・漏えいリスクを減らし、既存のロール/条件付きアクセスをそのまま適用できる。
- ガバナンスの一元化:GPT系もClaude系も同じAzureの管理下に置けるため、監査やコスト集計がバラけない。
- 調達のシンプルさ:新しいベンダー契約や別クラウドの管理体制を増やさずに、モデルの選択肢だけ広げられる。
裏を返せば、AWS中心の組織ならBedrock、個人の実験なら本家APIが手軽、という住み分けも成り立ちます。「Azure/Microsoft 365を全社基盤にしている企業」ほど、FoundryでClaudeを使う価値が大きいと考えると選定がぶれません。
まとめ:まず”GAのAzureホスト版”を触って確かめる
今回のポイントを整理します。
- 2026年6月29日、ClaudeがMicrosoft FoundryでGA。提供モデルはClaude Opus 4.8とClaude Haiku 4.5。
- GAなのはAzureホスト版。Anthropicインフラ版はプレビューなので混同しない。
- 起点は2025年11月18日のMicrosoft × NVIDIA × Anthropicの三者提携(GPUはNVIDIA GB300 Blackwell Ultra)。
- 呼び出しはMessages API。エンドポイントは
https://<resource>.services.ai.azure.com/anthropic/v1/messages。認証はEntra IDまたはAPIキー。 - 利点はAzureの認証・ガバナンスにClaudeを乗せられること。Azure/M365中心の組織ほど効く。
まずは検証用リソースでHaiku 4.5あたりを軽くデプロイし、Messages APIで一往復させてみるのが一番の近道です。「いつものAzureで、GPT以外の一流モデルも選べる」という体験を掴めば、社内提案の説得力が一段上がります。

「これで社内に説明できそう。まずはHaikuで一回叩いてみる!」
次のステップ:全社に安全に配るには?
個人で叩けたら、次の課題は「チームや全社に安全に配る」ことです。APIキーを配りっぱなしにせず、利用量の上限(レート制限)やコスト管理をどう設計するか。ここはAzure API Management(APIM)をFoundryの前段に置くのが定石です。その具体的な設計は、下記の実践記事で解説しています。
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