Azure Advisorをコスト削減と運用に活かす実践ガイド【予約・右サイジング・アラート】

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前回の記事でAzure Advisorという「クラウドの健康診断ツール」の全体像を押さえた方は、たぶん次にこう思ったはずです。「診断結果は分かった。で、これをどう使えば実際にお金が浮くの?」と。健康診断も、結果表を眺めているだけでは体は変わりません。数値をもとに食事を見直したり運動を始めたりして、はじめて体質が改善します。Advisorもまったく同じで、推奨事項を眺める段階から、実際に手を動かして節約・改善する段階へ進んで、ようやく価値が出ます

ところが、いざMicrosoft Learnの公式ドキュメントを開くと、コスト推奨の種類が延々とリストで並んでいたり、アラート設定の画面用語に押されたりで、「結局どこから手を付ければ一番効くの?」と手が止まってしまう。私自身、はじめてAdvisorのコストタブを開いたとき、推奨が数十件ずらっと出てきて、どれを本気で対応すべきか分からずしばらく放置してしまいました。

「コスト推奨って結局どれから対応すればいいの?出っぱなしの推奨をどう減らすの?新しく出たときに気づく方法は?」

この記事は、そのモヤモヤを解消する実践編です。具体的には、(1)一番お金に直結するコスト推奨(予約と右サイジング)の活用、(2)どうでもいい推奨を消して本命に集中する却下・延期の管理、(3)新しい推奨に気づくためのアラートとダイジェストメール、(4)それらを定期レビューとして運用サイクルに組み込む方法、の4本立てで解説します。読み終わるころには、Advisorを「たまに開くツール」から「毎月お金を守ってくれる仕組み」に変えられるはずです。

なお、そもそもAdvisorが何者で、5つの柱がどうなっているのかがあやふやな方は、先に Azure Advisorとは?5つの柱・推奨事項の使い方・コスト削減までを実務目線で解説 に目を通しておくと、この記事の位置づけがはっきりします。本記事はその「健康診断のあと、実際に生活改善する」パートを深掘りする子記事です。

コスト推奨を活用する(ここが一番お金になる)

まずは全員が一番気になるコストから。AdvisorのダッシュボードでポータルからAdvisorを開き、上部の「コスト(Cost)」タブを選ぶと、コスト削減の推奨だけがまとまって出てきます。ここで大事なのは、推奨には「見込み節約額」が金額で表示されるということです。「このVMを右サイジングすれば月◯◯ドル浮きます」といった具合に、対応したときの効果が最初から数字で見えている。だから、上から順にやみくもに潰すのではなく、節約額が大きいものから対応するのが鉄則になります。

コスト推奨は種類が多いのですが、実務でインパクトが大きいのはだいたい決まっています。ここでは効果の大きい2大テーマ、右サイジング予約(Reservations/RI)を中心に見ていきます。

右サイジング:オーバースペックなVMを身の丈に合わせる

Advisorのコスト推奨で真っ先に出会うのが、「使用率の低い仮想マシンを右サイジングまたはシャットダウンする」という推奨です(Impactは「高」で出ることが多い、つまり効果が大きい推奨として扱われます)。これは、Advisorが過去数日〜1週間のCPUやネットワークの使用状況を見て、「このVMはスペックに対して全然使われていませんよ」と教えてくれるものです。

たとえるなら、一人暮らしなのに4LDKの家に住んで毎月高い家賃を払っているような状態です。部屋のほとんどを使っていないなら、1LDKに引っ越せば家賃はぐっと下がる。VMも同じで、常時CPU 5%しか使っていない大きなサイズのVMを、ワンサイズ小さいSKUに変えるだけで、性能はほぼ変わらないまま料金だけ下がります。Advisorはこの「引っ越し先のサイズ」まで提案してくれます。

対応するときの注意点が一つ。VMのサイズ変更(リサイズ)はいったんVMの再起動が走ります。稼働中の本番サービスなら、メンテナンス時間を確保してから実施してください。また、Advisorが見ているのは基本的に直近の使用状況なので、「月末だけ高負荷になるバッチ用VM」のように、たまにしかピークが来ないワークロードだと「使っていない」と判断されることがあります。これは後半で触れる却下・延期で「これは意図的にこのサイズだよ」と印を付けておくと、以降ノイズになりません。

右サイジングの仲間として、VMにアタッチされていない未使用ディスクや、アプリが1つも載っていない空のApp Serviceプランを「削除してコストを節約しましょう」という推奨もよく出ます。これらは「解約し忘れたサブスク」のようなもので、対応も削除するだけと簡単なので、見つけたら早めに片付けておくとムダな出費が減ります。ただしディスク削除は元に戻せないので、念のためスナップショットを取ってから消すのが安全です。

予約(Reservations/RI):使い続けるなら「年間契約」で割引

右サイジングが「ムダをそぎ落とす」節約だとすれば、予約(Reserved Instances、通称RI)は「そもそも長く使うものを、まとめて前払いすることで単価を下げる」節約です。Advisorのコスト推奨には「仮想マシンの予約インスタンスを検討して、従量課金より節約しましょう」といった予約系の推奨が並びます。これもImpactが「高」で出やすい、効果の大きい推奨です。

これはスマホの料金プランを想像すると分かりやすいです。従量課金(Pay-As-You-Go)は「使った分だけ払う」プランで、身軽ですが単価は高い。対して予約は「1年(または3年)このくらい使い続けます」と最初にコミットする代わりに、単価をぐっと下げてもらう年間契約プランです。ずっと24時間動かし続けるデータベースやWebサーバーのように、明らかに長期間使うと分かっているリソースなら、予約に切り替えるだけで数十パーセント単位で安くなることも珍しくありません。

Advisorが賢いのは、この予約推奨をあなたの実際の使用実績(過去の稼働パターン)から逆算して出してくれる点です。「この1年間の使い方を見るに、これだけ予約を買っておけば一番トクしますよ」と、買うべき量まで提案してくれる。予約は購入すると条件に合うリソースへ自動的に割引が適用されるので、買ったあとに何か設定を切り替える手間もありません。

予約の親戚として、最近はSavings Plan(Azure Savings Plan for Compute)の推奨もよく出ます。予約が「このVMサイズをこれだけ」と対象を固定するのに対し、Savings Planは「1時間あたりこれだけ使う」という金額のコミットで、対象コンピュート全体に柔軟に割引が効くのが特徴です。ざっくり言えば、使う構成がかっちり決まっているなら予約、構成が変わりやすいならSavings Planと考えておけば最初は十分です。

「順番のコツは、まず右サイジングでムダを削ってから予約を買うこと。大きすぎるVMのまま3年予約すると、大きいサイズを3年ぶん契約することになって逆にもったいないです。」

もう一つ、地味に効くのが「期限が近い予約の自動更新を設定する」という推奨です。予約は期限が切れると、リソースは動き続けますが課金が従量課金の高い単価に戻ってしまいます。気づかないまま数か月放置すると、割引が消えた高い料金をずっと払い続けることになる。Advisorはこの「そろそろ切れますよ」を教えてくれるので、見かけたら自動更新をオンにしておきましょう。

推奨の却下・延期でノイズを減らす

ここまでで「効く推奨から対応する」話をしてきましたが、実はAdvisorを使いこなすうえでこれと同じくらい大事なのが、対応しない推奨をちゃんと片付けることです。理由はシンプルで、ずっと出っぱなしの推奨がリストに溜まると、本当に対応すべき推奨が埋もれて見えなくなるからです。メールの受信箱と同じで、既読でも未対応でもないメールが100件並んでいると、大事なメールを見落としますよね。

Advisorには、対応するつもりのない推奨や「今はやらない」推奨を整理する仕組みが用意されています。推奨事項の一覧から個別の推奨を開くと、却下(Dismiss)延期(Postpone)という操作ができます。

却下(Dismiss)は、「この推奨はうちの事情では対応しないと決めた」ものに使います。たとえば先ほどの「月末バッチ用でわざと大きいサイズにしているVM」。これは意図してそうしているので、右サイジング推奨が出ても対応しません。却下しておけば、以降その推奨はアクティブな一覧から外れ、余計なノイズになりません。いわば「これは仕様です」という付箋を貼って脇へよける操作です。

延期(Postpone)は、「対応はするけど今じゃない」ものに使います。期間(たとえば1か月後、3か月後)を指定して一時的に一覧から隠し、その期間が過ぎると再び推奨が顔を出します。「次のメンテナンス窓でまとめてやろう」といったケースにぴったりで、リマインダー付きの先送りだと思ってください。却下が「もう見なくていい」、延期が「あとでまた見せて」という違いですね。

この却下・延期をこまめにやっておくと、Advisorの一覧が「今、本当に対応すべき推奨だけ」のきれいな状態に保たれます。逆にここをサボると、対応済みなのか未対応なのか判断がつかない推奨が積み上がり、Advisorを開くこと自体が億劫になって、結局また放置——という悪循環に陥ります。私が最初にAdvisorを放置したのは、まさにこの整理をしていなかったのが原因でした。

アラートとダイジェストメールで「新しい推奨」に気づく

却下・延期で一覧をきれいにしても、環境は日々変わります。新しいVMを立てれば新しい推奨が生まれるし、予約の期限も近づいてくる。これを毎回ポータルを開いて目視でチェックするのは現実的ではありません。そこで使うのがアラートダイジェストメール、つまり「新しい推奨が出たら向こうから知らせてもらう」仕組みです。健康診断でいえば、再検査の案内ハガキが自動で届くようにしておくイメージですね。

アラート:新しい推奨が出た瞬間に通知する

Advisorが新しい推奨を検知すると、その出来事は裏側でAzureのアクティビティログにイベントとして記録されます。アラートは、このイベントをトリガーにして通知を飛ばす仕組みです。設定は、ポータルでAdvisorを開き、左メニューの「監視(Monitoring)」→「アラート」→「新しいAdvisorアラート」から作成します。

設定の流れは、大きく3ステップです。まずスコープで、どのサブスクリプション(必要ならリソースグループまで)を監視するかを選びます。次に条件で、どんな推奨を対象にするかを決めます。ここは「カテゴリと影響レベル」で絞る方法(例:コストカテゴリの影響レベル高だけ)と、「推奨の種類」でピンポイントに絞る方法が選べます。最後にアクショングループを指定して、通知の届け先(メール、SMS、あるいはWebhookで自分のシステムへ連携)を設定します。

ここで一つ、実務で必ず知っておくべき制限があります。Advisorのアラートは、高可用性・パフォーマンス・コストの推奨にしか対応していませんセキュリティ推奨はアラート対象外です。セキュリティの通知が欲しい場合は、AdvisorのアラートではなくMicrosoft Defender for Cloud側の仕組みを使うことになります。「Advisorのアラートを組んだのにセキュリティ推奨の通知が来ない」と悩む前に、この前提を押さえておいてください。

アクショングループという言葉が初めての方向けに補足すると、これは「通知が発火したときに、誰に・どうやって知らせるか」をひとまとめにした設定です。一度「運用チームのメーリングリストにメール」というアクショングループを作っておけば、いろいろなアラートから使い回せます。

ダイジェストメール:定期的にまとめて受け取る

アラートが「新しい推奨が出た瞬間の通知」だとすれば、ダイジェストメールは「たとえば週1回、そのタイミングの推奨をまとめて送ってくれる定期レポート」です。新聞の朝刊のように、決まった頻度でAdvisorのサマリーがメールでコンパクトにまとまってくるので、忙しくてもざっと目を通すだけで状況を把握できます。ダイジェストでも、対象カテゴリ・言語・送信頻度・届け先などを構成できます。

アラートとダイジェストは対立するものではなく、組み合わせて使うのがおすすめです。影響の大きい推奨(コストの高インパクトなど)はアラートで即時に拾い、それ以外の全体像はダイジェストで定期的にざっと確認する。こうしておくと、「大事な推奨は取りこぼさず、かといって細かい推奨で通知が鳴りっぱなしにもならない」という、ちょうどいいバランスになります。

定期レビューとして運用フローに組み込む

ここまでの道具立て(コスト推奨の対応・却下延期での整理・アラートとダイジェスト)が揃ったら、最後の仕上げはこれらを一度きりで終わらせず、定期的なレビューとして回すことです。健康診断も、一度受けて生活を改善したら終わり、ではありません。毎年受け続けて、そのつど改善するから体質が保たれる。クラウドのコストと信頼性も、放っておけばまた少しずつムダやリスクが溜まっていきます。

具体的には、「月に一度、Advisorレビューの時間を決めて予定に入れておく」だけで十分に効果があります。ダイジェストメールが届くタイミングに合わせて15〜30分ほど確保し、次のような流れで回すと習慣化しやすいです。

  1. コストタブを開き、節約見込み額の大きい推奨から対応できるものを対応する(右サイジング・予約・未使用リソースの削除)。
  2. 対応しないと決めた推奨は却下、今はやらないものは延期で整理し、一覧を「本当に効くものだけ」に保つ。
  3. 信頼性(Reliability)や運用面の推奨にも目を通し、コスト以外のリスクが溜まっていないか確認する。
  4. アラート・ダイジェストの届け先や条件が今のチーム体制に合っているか、たまに見直す。

公式でも、Advisorの推奨を信頼性の継続的な改善サイクルに組み込むことが推奨されています。ポイントは、Advisorを「問題が起きてから慌てて開くツール」ではなく、定期点検の項目表として先回りで使うという発想の転換です。受け身で使うか、仕組みとして回すかで、半年後・1年後のコストと安定性ははっきり差が出ます。

ちなみに、この「毎月レビュー」を一人の頭の中だけに置いておくと、その人が忙しい月に飛んで自然消滅しがちです。ダイジェストメールをチーム全員に届くようにしておく、レビューを定例ミーティングの1アジェンダにする、といった形で仕組みに埋め込んでおくと、属人化せずに続けられます。

まとめ

この記事では、Azure Advisorを「診断結果を眺める」段階から「実際に成果を出す」段階へ進めるための実践的な使い方を見てきました。要点を振り返っておきます。

  • コスト推奨:節約見込み額が金額で出るので大きいものから対応。ムダを削る右サイジングと、長く使うものを安くする予約(RI)・Savings Planが二大テーマ。順番は「右サイジング→予約」。
  • 却下・延期:対応しない推奨は却下、今やらないものは延期で整理し、一覧を本命だけに保つ。ノイズを消すことが本命への集中につながる。
  • アラート:新しい推奨が出た瞬間に通知。ただし高可用性・パフォーマンス・コストのみ対応、セキュリティは対象外
  • ダイジェストメール:定期的にまとめて受け取る。アラート(即時)とダイジェスト(定期)を組み合わせるのがおすすめ。
  • 定期レビュー:月イチで予定化し、運用サイクルに組み込む。受け身でなく先回りで使うのが差を生む。

ここまでできれば、Advisorはもう「たまに開くだけのツール」ではありません。毎月あなたの代わりにコストのムダとリスクを見張り、対応すべきものを金額付きで運んできてくれる、継続的な改善の仕組みになります。健康診断を受けっぱなしにせず生活改善まで回すのと同じように、Advisorも運用サイクルに組み込んで、継続的にコストと信頼性を良くしていきましょう。

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